カール・ベーム ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1975年日本公演
蘇るカール・ベーム |
カール・ベーム75年来日時のNHKによる演奏の記録。当時、テレビとFMで中継された演奏だが、テレビの音源はモノラルの為、ステレオのFM音源とシンクロさせてDVD化されている。
特典として、リハーサル風景も収められており、飽きさせない内容だ。
ベートーヴェンのリハーサルでベームは、いまひとつ調子の合わないメンバーに「私が4拍子で踊ってあげたいよ」と辛辣だが、リハ終了後、メンバーから寄せられる質問にひとつひとつ丁寧に答えていたり、「体調はどうですか?」とメンバーに話しかけるシーンなどは、当時のベームとウィーンフィルの良好な関係を象徴している。
演奏は、特にブラームスのフィナーレの高揚感はライブならではのもので、当時を知る人も、若い世代のファンにもお勧めできる奇跡の記録だ。
素晴らしいの一言 |
特にブラームスの交響曲第一番が白眉です。他の評者がご指摘になっている通り、第四楽章は白熱の演奏で、20年以上の歳月を飛び越えて感動が伝わって来ます。それ以外でも、音色の美しさ、楽器のバランス、速すぎずまた遅すぎない絶妙のテンポなど多くの聴き所がある奥深い演奏だと思います。
奇蹟のブラームス。若い人にも推薦 |
それは1975年3月であった。19日(DVDには18日と誤記)のシューベルトプロに行き感動した。特にアンコールのマイスタージンガー(DVD収録)がよかった。そのため、22日には当日券の列に並びブラームスも聴いた。ちょうど先代貴ノ花が初優勝に一歩近づいた日だった。その後、ベームVPOが2回来日したことすら知らない様な生活を送ることになるとは思いも及ばず幸せな大学生活を満喫していた。しかし、このDVD収録の17日のブラームス、特に第4楽章は凄い。フルトベングラーの第9を彷彿とさせる。22日には聴衆はこんなに興奮しなかった。楽譜に忠実な指揮をしていた以前のベームからは考えられない演奏だ。私は特にブラームスやブルックナーに関してはショルティやマタチッチの演奏が好きだ。VPOを指揮したバーンスタインの様なテンポや強弱をいじる演奏はグロテスクでパロディの様に感じてしまう。だが、これはよい。奇蹟だ。ベームの熱い思いを感じとったVPOの自発的意志があったと思う。このブラームスだけでも価値がある。若い人にも推薦できる。
感動はいつまでも。 |
ベームの来日公演。画面の向こうには元気なベームが。熱狂的な観衆が。FMで耳をそばだてて聞いた感動が今、目で確認できる。音楽が訴えかけ、特典のリハーサル風景にはそこにいたるまでの細かな指示が読み取れる。見終わったとき知らず知らず泣いていた。音楽は色あせることを知らない。ベームとその仲間たちとともに。