良寛の書
良寛世界を探る三つの「ツボ」 |
壺(ツボ)とは、肝要なところということで、良寛、その書の美を味わう勘所を示唆してくれる。一見稚拙とも受け取れる書の、どこに魅力があり、現代の人にも訴えるものがあるのかを、三つの観点から説き明かしてくれる。
〈壱のツボ〉すべてをかなのように書く。たとえ漢字でも、やわらかくて細い曲線の心地よさを感じさせる美しさがある。「天上大風」は誰もがどこかで目にしたことがある逸品。
〈弐のツボ〉ずれとゆれを楽しむ。不ぞろいな形、大きさ。その絶妙なバランスを楽しむ。コンピュータグラフィックスでずれ、ゆれを補正した字は、どこか物足りない。
〈参のツボ〉弱さに強さがある。弱くて細く見える文字も、高い技術と集中力によって書かれている。ゆらめく線にひそむ力強さを見出したいものである。
良寛は、書を書いて他人に認められようという意識がないので、力まない。しかし、その奥にはぬくもりとうるおいがある。「書にひそむ哲理」「細みと軽み」が良寛のすさまじい向上心から生まれたと言う。良寛墨書をカラー版で奥深さをにじみ出して、味わい深い。