新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
最新ネットワーク理論が自然界、ビジネス界、医学界、人間界に及ぼす影響をはじめて詳説した、衝撃の1冊。 1980年代、ジェイムズ・グリックの『Chaos』(邦題『カオス―新しい科学をつくる』)が、初めて「複雑系」という概念を世に紹介し、大きな話題をさらった。それに匹敵するのが、アルバート・ラズロ・バラバシによる本書である。これは、科学界の次の主役がまぎれもなく「ネットワーク理論」であることを実証した1冊だ。 私たちはごく小さな世界に住んでいるのではないか。この世のすべてのものが、1つにつながっているのではないか。長いこと、人間はそう思って生きてきた。実際、地球上のネットワークは、今このときも果てしなく広がり続けている。人間の脳からインターネット、経済、それに個人的な友人関係に至るまで。しかも、このつながりは決して成り行きまかせのものではない。つまり、すべてのネットワークは、純然たる秩序とシンプルな法則によって成立していたのだ。この事実に、科学者たちは少なからず衝撃を受けた。これらネットワークの構造と様式を理解すれば、私たちには驚くべき力が備わるだろう。たとえば、だれもが自分の力を発揮できる最高の社内組織を編成する、壊滅的な被害を受ける前に病気の蔓延をくいとめる、といった魔法のようなことが現実となるのだ。 著者アルバート・ラズロ・バラバシは構造物理学者。つねに革新的な意見を発表し続けるネットワーク理論研究の第一人者でもある。その彼が、本書ではネットワーク理論の最新知識を一般向けにわかりやすく解説、研究最前線で活躍する科学者たちの横顔にせまっている。彼らは、科学界全般に共通するネットワークの法則は、社会的ネットワーク、企業内ネットワーク、細胞内ネットワークにもあてはまることを証明。「この世の中のすべての事象は相互連結している」というきわめて重要な概念をさぐりあてたのだ。さらにバラバシは語る。この知識を応用すれば、サイバーキラーによるインターネット被害も、カゼによる新種ウィルス流行も回避可能、これからの民主政治の行方を左右することだって可能だ、と。権威ある学者による、実にわかりやすい解説が魅力的な本書は、科学の新世紀の幕開けを告げる、高揚感あふれる1冊だ。 「ネットワークに注目しよう」??― 本書のメッセージはいたってシンプルだ。これは、ネットワーク理論の誕生、特徴、進化について詳しく解説した本である。本書でバラバシはこう主張する。ネットワーク理論を、自然、社会、テクノロジー全般にまであてはめて、統一されたフレームワークを構築しよう。そのうえであらゆる事象をよりよく理解し、インターネットから身体的病気に至るまでのさまざまな問題を解決しよう。ネットワークはいたるところに存在する。つまるところ、私たちに必要なのは、それを見きわめる「目」だけなのだ、と。 たった1つの分子や遺伝子だけに着目して病気を治癒しようとすると、医師たちはたちまち困難な問題に直面してしまう。それは、生命体に共通する複雑な相互関連性を無視しているからだ。また、ネットワークを攻撃しているのはハッカーだけではない。もろい生態系ネットワークに対しては、私たち全員がまったく援助の手をさしのべようともせず、ただ「ハッキング行為」を繰り返しているだけなのだ。こんなことばかりしていたら、じきに最悪のシナリオが現実となるだろう。すなわち、私たち人間は、あらゆる「種」のなかで、ぽつんと孤立した存在になってしまうのだ…。 本書は、地球上すべての事象を結ぶネットワークをとりあげた、驚くべき1冊。ひとたびページをめくれば、専門分野という従来の枠組みを越えた、自由な知識空間への旅が可能になる。15におよぶ「リンク」を紹介することで、「ネットワークの新科学」という新たな革命を詳説した、見逃せない1冊。(Book Description)
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後半は散漫だが、ネットワークの特性を良く理解できる本 |
インターネットのネットワークとしての特性である「ハブ」「べき法則」を分かりやすく解説する本だ。ネットワークの特性を研究することが、ひとつの大きな研究分野であると言うことにまず驚かされる。
技術的な知識もほとんど必要としないし(ルータやハブという用語程度)、数式に至ってはほとんど出てこない。しかしネットワークの特性とは何を意味するのか、またインターネットにおける特殊性はどんなところにあるのかと言うことを理解させてくれる。
有名な「ケーニヒスベルクの橋」の一筆書き問題からグラフ理論を紹介したり、「六次の隔たり」や「ケヴィン・ベーコンゲーム」でネットワークの大きさを説明したり、「80対20の法則」でネットワークのスケールフリー性を説明したりと、特性を理解させるのに分かりやすい例を用いることで非常に読みやすくなっている。
後半ではインターネットの成り立ちから、ネットワークとしての脆弱性とは何かというような解説と共に、今後ネットワークによって受けられる恩恵や、医学や経済社会分野でのネットワーク思考の重要性にも触れているが、やや散漫で付け足し風ではある。しかし経済でのネットワーク思考の実例であるとか、WWWの大きさを議論する段階でWWWの世界がリンクの流れから4つに大別されるという話が非常に面白い。
「金持ちはより金持ちに」と言う章で、先行事業者の優位性を覆せる戦略があることを解説しているが、大局的にはハブ的存在である先行者の利益は揺るがないと思う。したがって国家や地域レベルでの「IT格差」による経済成長格差というのが今後の大問題になると思われるが、本書ではそこまでは踏み込んでいない。
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世界のしくみが少し分かるかもしれない |
ネットワークの科学に関する解説書。
様々な学者が、どのようにネットワーク構造を捉えて研究してきたのかが
書かれている。世界中の誰とも6人で繋がるという「六次の隔たり」は興味深い話。
人のネットワーク、インターネット、遺伝子等の体内のネットワークの話もあり、
科学の読み物が好きな人におすすめします。
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スケールフリー・ネットワークとは |
よみやすいが主張している中身のわりにやや冗長だ。
・共時的には、集中的なハブをもつ「ベキ乗数分布」
・通時的には、「成長」と「選択」
これが「スケールフリーネットワーク」の生じる前提。
とてもヒントに満ちた一冊です。
但し、タイトルがまずい。安もののビジネス指南書みたい・・・
素直に『新しいネットワークの科学』位でいい。
もしくはずばり『スケールフリー・ネットワーク』とすれば
いいのに・・・
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わかりやすく、かつ実用性が見込めるネットワーク論 |
スケール・フリー・ネットワーク理論の解説書です。
ネットワーク理論をわかりやすく歴史を紐解きながら、様々な分野との関連性も踏まえて解説しています。
また、ネットワークの法則としての基本的な要素についての解説も丁寧にされており、
ネットワーク理論の入門書として優れた本だと思います。
法則の解説である以上、執筆時点ではわかっていない要素や、無意識的に除外された要素もあるでしょうが、
それは自然科学につきもののことですので、今後の更なる発展に期待したいと思います。
また、ネットワーク理論にはダンカン・ワッツのスモール・ワールド・ネットワークがあります。
なぜ世界が狭いのかについての理論的な説明をしていますが、そのダイナミクスには触れていませんので、
スケール・フリー・ネットワークの方が理論として優位だと思います。
なお、邦訳タイトルがいまひとつなので、注目を集めにくいのではないかと危惧します。
(最近の新書のようにタイトルだけという本よりはよほどいいのでしょうが)
あと、訳者解説は不要ですね。
本書の理論の背景には複雑系と進化理論が大きく貢献しているはずですが、
訳者はそれを過小評価していると思わざるを得ない解説をしています。
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ダンカン・ワッツ 『スモールワールド・ネットワーク』と一緒にどうぞ |
最初から最後まで知的好奇心に身もだえしながら読めます。扱っている内容、構成、文章のどれもが一級品だからです。タイトルだけが三級品というのはご愛嬌。
読了後には何気ない普段の生活にも隠れたネットワークが見えてくるようになるでしょう。
ダンカン・ワッツ 『スモールワールド・ネットワーク』では、本書と大体同じ事例を扱っていながらも理論的な解釈が違っているので、両者の違いを見るのも大変面白い。ただ、本書の方が面白く書かれているので、本書から読むのが良いと思う。